患者様が前向きである限り、私たちもあきらめません。患者様と協力して乗り越えた数多くの難症例、その成功体験が、私たちの自信です。
この方は、上下とも歯が全くありませんでした。上には8本のインプラントを埋め込み、下は「今までの義歯でもがたつきが解消されれば支障はない」ということで、4本のミニインプラントによる義歯にしています。噛み合わせに全く問題がないほどに回復しました。
ご友人に「きれいな歯やね」と言われるそうです。ご自身も「何でもボリボリ食べられる」と喜んでいらっしゃいました。
このように、全く歯がない状態から、右の写真のように美しい歯に整え、機能を回復させることも可能です。もちろん天然の歯を長く使えるに越したことはありませんが、患者様の体質によっては、なかなか難しいこともあります。歯を失ってお困りの方、現在使っている義歯やブリッジにご不満や違和感を抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。
この写真は1986年、私が大学病院時代に担当した、当時40代の女性の患者様のお口の写真です。
レントゲン写真でおわかりのように、特に下の前歯などは骨の土台となるはずの歯槽骨が、歯の根の先までありませんでした。歯はぐらつき、風が吹けば文字通りゆらゆら揺れていました。
この状態を見れば、普通は「抜くしかない」と診断するでしょう。事実、私もそう診断を下し、この方にそう伝えました。
しかし、「どうしても、どうしても抜きたくありません」と、この方はなかなか首を縦に振りません。「何とか治してください」と拝むのです。困った私は、歯周病科の上司に相談しましたが、彼が下した診断も私と同じ「抜歯」でした。
けれど私は、患者様がそこまでの意思を持っていることに次第に心動かされ、自分も何とか抜かずに治療できないかと思うようになりました。
とにかくプラークコントロールを徹底し、すみずみまでクリーニングを行い、すべての歯に当時の最新治療を施しました。
その結果、患者様のご協力の甲斐もあって、術後のレントゲンで見られるように、奇跡的に骨が再生しました。写真のように連結冠で固定したことにより、ぐらつきもなくなりました。しっかりと、ご自身の歯で何でも食べられるようになったのです。喜ぶ患者様の表情と言葉を前に、私も天にも昇るような気持ちでした。
――このとき、私はどんなに難しい症例であっても、「患者様のお気持ちが前向きである限り、絶対にあきらめない」と心に誓いました。以来、現在まで1,000名を超える重症の歯周病患者様を治療してきました。私の歯周病治療における、原点ともいえる症例です。